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サラの春


昼下がりに、脱力ものの光景を見た。

事務所近くの公園で、白い躰のサラを見かけた。その目の前には、小さなネズミがチョロチョロと動き回っていた。

どうも不器用なネズミらしく、道から公園への段差を上がれない。逃げようと必死なのか、右に駆けたり左に走ったりと慌ただしい。その様子を、興味津津の体(てい)でサラが見つめている。

眺めているサラも呑気なものなら、ネズミの動きも妙に間が抜けている。巨体の猫がすぐ背後にいるというのに、片方の段差を越えられないと知るや、サラのほうに近づき、サラを通り過ぎ、逆方向の段差をまた試してみる、という無防備なことを繰り返している。

私に気づいたサラが、こっちを見やりながらニャアという。その合間にネズミが再び方向転換して、なんとサラの四肢の間を通り抜けた。

すると、サラは「キャッ!」という風体でその場でぴょんと飛び上がった。おいおい、君はネズミに触られてビビる猫なのかい……。

その後もネズミの様子を、サラは右へ左へと追いかける。そばまで寄って白い手を伸ばそうとする。ネズミも呑気なもので、サラを恐がっているのか、相手にしていないのか、サラの至近距離で右往左往している。サラのフトコロを通り抜けることを、まるで躊躇しないのである。

サラが私のほうを見ている間に、ネズミは公園の段差の下をつたって、駆けていってしまった。ほんの数秒サラが視線を離したスキに、いなくなったのである。

その後のサラの驚きようと淋しがりようといったら――ニャァオ。ニャァオ。とはっきり区切りをつけて鳴き続けた。「戻ってきてよ、どこ行ったのよ」と訴えているらしい。

いや、けして俊敏な動きのネズミではなかった。追いかけようと思えば簡単にできたはず。ひとえにキミの悠揚さが、喪失の理由である。

しかし、ネズミのおもちゃ相手なら、野生本能むき出しに飛びかかって、バキバキと噛み尽くすのに、本物のネズミを見てびっくりするとは……まあ、私と縁ある猫なくらいだから、そんなものなのか。殺生しない猫である。偉いものだ。慈悲の実践だ。

そんな出会いがあるからなのか、サラは最近は公園で一日中遊んでいる。昼も夜も、ほとんど事務所には帰ってこない。休みたいときに帰ってきてクウクウ寝るか、食べたいときに帰ってきてカリカリ食べるか。

で、用事がすんだら速攻で外に遊びに行く。なんだか私は、都合のいい愛人みたいな?ものであろうか。

私も夜に公園に出かけることがある。チョッチョッと舌を鳴らすと、やぶの中からニャアと顔を出してくる。

広い場所でネズミのおもちゃを振り回すと、持ち前の運動能力を発揮して、ダイナミックに宙返りして捕獲する。

最近はすべり台も覚えた。ツルツルはあまり好きじゃないらしいが、ネズミのおもちゃを滑り台の上でチョロチョロ動かすと、砂地から駆けあがって口にくわえる。そのまま四足で踏ん張りながら、するする滑り落ちていく。

さらにネズミのおもちゃで誘惑して、すべり台の階段を上がらせる。ネズミのおもちゃを垂らすと、滑るのがイヤなサラは、うらめしそうに上から眺めている。

それでもちょんちょんと動かすと、捕獲本能にスイッチが入って、すべり台に踏み込んでしまう。で、そのままお尻を上に向けたまま、また哀しげに滑り落ちていく。その様子をみて、私はハハハと笑う。

近所の人たちが犬を連れてやってくる。サラに興味を持って近づいてくる犬もいる。サラはビビッてこんもりとしたコンクリ山の上に駆けあがって、フゥ~と威嚇してみせる。

公園には、犬も、見知らぬ人たちも出入りする。サラはビクビクしながら、私についてくる。幼い子が母親を安心のよりどころにするように、サラにとっても、私が安全の目印になっているらしい。愛らしいものである。

ネズミのおもちゃで遊んでいたら、サラの動きが突然止まった。何かなと思ったら、灌木の中を近づいてくる物体が。モンタ君(ハクビシン)だった。

神楽坂は、ハクビシンが意外と多いそうである。サラは唸るでも、毛を逆立てるでもなく、モンタ君をじっと見つめている。モンタ君のほうは、「ううう」とうなって見せる。そして走って逃げていくのだが、ご執心のサラはそのうしろを追いかけていく。途中であきらめて、またニャァオ!(戻ってきてよ)と鳴く。

サラにとっては、ネズミもハクビシンも、お友だち候補の様子である。こんな遭遇が楽しいから、サラは、昼間でも公園の灌木の中でじっとしていたりするのであろう。

いろんな出会いの中で、それなりに楽しんでいるらしいサラの春である。
 
 
すべり台の下でネズミを待ち構えるサラ。でも本物にはビビる。